お母さんと赤ちゃんのための、小児歯科の一口情報      ビーバー小児歯科
 

「この資料は、大阪南医療センター産婦人科 のびのびサークル(生後1か月~12か月の乳児を対象) の依頼で講演を行ったときに配布した資料です」育児中のお母さんの参考にしてください。


いま世間ではダイエットが盛んに言われ、関係の書籍やサプリメントなどが、皆さんの周りにあふれています。

ダイエットに効果がある食事や食生活が、実はむし歯の予防法ともほぼ同じだということは、ご存知でしょうか。

たとえば、ダイエットのために大切と言われている以下のことは:
 よく噛んで食べる(一口で30回以上噛む) → 唾液の分泌がよくなり、むし歯になりにくい。
 夕食後は飲み食いしない → 夕食後の飲み食いは、むし歯もたくさんできる。
 のどが渇くとお茶か水を飲む → 多くの市販の飲料は糖分を含んでおり、むし歯の原因になる。


このように、ダイエットのための行動は、そのほとんどがむし歯予防につながるため、お母さんがダイエットに努められると、子どものむし歯も少なくなるといえるのです。お母さん方どうぞダイエット頑張ってください。

 食事とお茶  

ここで折角ですので、皆さんにもう一つとっておきの情報を。

よく噛むようにするには、食事中にお茶を出さないようにすることです。お茶が目の前にあると、一口食べても数回噛むだけで、あとはお茶などで流し込んでしまいがちです。
これが肥満の原因の一つです。

お茶やお水がないと、ゴックンと飲み込むまでに30回は十分噛めることでしょう。

ご家庭でぜひ試してみてください。

お母さんはスリムで美しく、赤ちゃんのむし歯も予防できる、一石二鳥です。

しかも道具は要らず、何よりいいのはタダでできるのです。

 授乳  

 <母乳育児のメリット>

母乳育児は、医学的に優れていることがたくさんありますが、発音やきれいな歯並び、離乳食を噛む力も強くなる、という面からも、とても大切なことなのです。

ただし、気を付けていただきたいことは、授乳のときは乳首にしっかり吸い付いていることです。そうすれば舌は正しい動きと、正しい位置に落ち着き、歯並びや発音にいい影響を与えるのです。

左図の右側のようにちょこっと吸い付いている程度だと、舌の位置が悪く、歯並びがよくなるという利点は期待できないでしょう。

私たち小児歯科医は、ぜひ母乳で育児されることをお勧めします。

母乳とむし歯の関係について、インターネットを見ますと、「4歳まで母乳を与えていたが、むし歯はできなかった」などといった記載がありますが、実際には長く母乳をあたえていてもむし歯にならない子もいれば、むし歯になる子もいるのです。お茶やお水を除いた、ほとんどすべての食べ物や飲み物は、むし歯の原因になるのです。どのような飲食物でも、口の中にむし歯菌がたくさんいるなど環境が悪いと、むし歯の原因になってしまいます。

 

授乳期間中の子どもが小さな時期に、むし歯になりやすい環境を作らないようにしておけば、母乳が子どもたちのむし歯の原因になることは、ほとんどありません。

小児歯科医は、むし歯ができて受診してくる授乳中の乳幼児のばあいでも、そのむし歯が軽症なら、まずは食生活の改善を図り、むし歯の進行の様子を経過観察します。そして、むし歯の進行の程度を見極めたうえで、次にどうするかを検討するようにしています。食生活が改善されれば、むし歯の進行を食い止めることも可能です。


決してまず断乳ありきのような指示を出すことはありません。

その理由は、乳幼児の歯にむし歯ができる主な原因は、日ごろの食生活にあるのであって、決して母乳が主たる原因ではないからです。食生活の内容が、むし歯と大いに関係していることをぜひ理解ください。

歯が生えてくるころになると、一度食事調査をご自分でしてみるといいでしょう。

 

歯が生えてきて母乳以外の食べ物も口にするようになると、むし歯にならないように歯の手入れも必要になります。

母乳育児支援に関して、ある先生が書かれた論文の一節に以下のような記載があります。

「夜寝る前に歯磨きを適切に行えば、夜間の授乳がう歯の原因とはならない。小児歯科学会は上の前歯が生えたら離乳食(補完食)後に指に巻いたガーゼや綿棒で歯を清拭し、1歳を過ぎたら食後に歯を適切に磨くことが大切であると記載している。夜間の母乳を継続する場合には、特に夕食後の歯磨きをしっかりと行うことが望まれる。」

確かに日本小児歯科学会も、夕食後の歯磨きをしっかり行うように提言しています。

しかし、1歳になるかならない子の歯をきれいに磨くのは、かなり難易度の高い作業です。

とくに小さなお子さんの、むし歯予防のための第一選択は、食生活をチェックすることだと思います。

早くからお菓子や市販の飲料を口にしていないか、飲み食いの回数は多くなっていないか、だらだら飲み食いをしてはいないか、夕食後の飲み食いはないか。これらのことをチェック、改善することを優先したうえで、歯の手入れもと考えることが賢明でしょう。食生活のほうが歯磨きより、歯に与える影響が大きいためです。

次に歯磨きについてですが、どのようにすればきれいに磨けるのでしょうか。

 昼間の歯磨き  

一本ずつ歯を磨くのが、歯をきれいに磨くポイントですが、夜になると小さな子は眠くてぐずるので、時間をかけて磨くことは難しくなります。そのてん昼間だと、子どもの機嫌がよく時間をかけて磨くのに適していると思います。また窓際の明るい場所で歯を磨くと、歯についた汚れもよく見え、自然と歯ブラシをそこに当てて、歯磨き名人にすぐなれるのです。

「歯磨きは、昼間の明るい窓際で」が歯磨きのポイントです。

小さな子どものむし歯予防は、歯をきれいに磨くことと、お利口に歯磨きをさせる年齢になるまで、市販のお菓子や飲料を与えないようにすることです。これが小さなお子さんの、最も有効なむし歯予防の方法なのです。

子どもが小さく歯の数も少ないときは、むし歯菌は口の中に住み着きにくいのですが、市販のお菓子などを食べ始めると、早い時期から多くのむし歯菌が住み着き、むし歯を作る準備が整ってしまいます。
生えて間もない歯は、歯の質がとても弱いので、このような時期にむし歯菌がいると、母乳でさえむし歯の原因の一つになってしまうのです。

 母乳と齲蝕  

左の図は、母乳がどのように歯に影響を及ぼすようになるのかを、模式図にしたものです。
1歳未満のころは、夜間でもある程度唾液が流れているため、母乳でむし歯になることはまずありません。1歳を過ぎると、夜間の唾液の流れが少なくなり、むし歯にならないよう注意する必要があります。軽症のうちにむし歯を発見できれば、お菓子を食べるのを止めたり歯の手入れをしっかり行うことで、授乳を続けてもむし歯の進行を抑えることも可能です。市販のお菓子や飲料は、泣かずに歯磨きが出きるまで待ちましょう。

ではおやつはどのようなものを与えればいいのでしょうか。

おやつの基本的な考えは、小さなお子さんにとっては、補食として考えるべきだと思います。おやつは母乳や3度の食事だけでは補うことができない、成長に必要な栄養やエネルギー補給です。

 おやつのいろいろ  

そして、お菓子の中からおやつを選択するのではなく、自然のものを中心にした多くのものの中からおやつを選ぶようにすると、お菓子が入ってくる回数も、おのずと少なくなってくるようになります。

果物など自然の食べ物は、人の心もやさしくしてくれるでしょう。

歯が生えてくると、小児歯科を受診することをお勧めします。


   
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