授乳期間中の子どもが小さな時期に、むし歯になりやすい環境を作らないようにしておけば、母乳が子どもたちのむし歯の原因になることは、ほとんどありません。
小児歯科医は、むし歯ができて受診してくる授乳中の乳幼児のばあいでも、そのむし歯が軽症なら、まずは食生活の改善を図り、むし歯の進行の様子を経過観察します。そして、むし歯の進行の程度を見極めたうえで、次にどうするかを検討するようにしています。食生活が改善されれば、むし歯の進行を食い止めることも可能です。
決してまず断乳ありきのような指示を出すことはありません。
その理由は、乳幼児の歯にむし歯ができる主な原因は、日ごろの食生活にあるのであって、決して母乳が主たる原因ではないからです。食生活の内容が、むし歯と大いに関係していることをぜひ理解ください。
歯が生えてくるころになると、一度食事調査をご自分でしてみるといいでしょう。
歯が生えてきて母乳以外の食べ物も口にするようになると、むし歯にならないように歯の手入れも必要になります。
母乳育児支援に関して、ある先生が書かれた論文の一節に以下のような記載があります。
「夜寝る前に歯磨きを適切に行えば、夜間の授乳がう歯の原因とはならない。小児歯科学会は上の前歯が生えたら離乳食(補完食)後に指に巻いたガーゼや綿棒で歯を清拭し、1歳を過ぎたら食後に歯を適切に磨くことが大切であると記載している。夜間の母乳を継続する場合には、特に夕食後の歯磨きをしっかりと行うことが望まれる。」
確かに日本小児歯科学会も、夕食後の歯磨きをしっかり行うように提言しています。
しかし、1歳になるかならない子の歯をきれいに磨くのは、かなり難易度の高い作業です。
とくに小さなお子さんの、むし歯予防のための第一選択は、食生活をチェックすることだと思います。
早くからお菓子や市販の飲料を口にしていないか、飲み食いの回数は多くなっていないか、だらだら飲み食いをしてはいないか、夕食後の飲み食いはないか。これらのことをチェック、改善することを優先したうえで、歯の手入れもと考えることが賢明でしょう。食生活のほうが歯磨きより、歯に与える影響が大きいためです。
次に歯磨きについてですが、どのようにすればきれいに磨けるのでしょうか。
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